少女漫画で帝王学を学べ!?骨太中華系ファンタジー『暁のヨナ』における人心掌握術とは!?

 スラムダンクを読んで育ったタイプなので、少女漫画はそれほど読んできていないのですが、最近とても骨太な作品に出会ってしまい、とても気に入ってしまったのでぜひご紹介したいと思います。

 本作品はまだ連載中で、2015年にアニメ化。そしてなんと、2018年11月の今週「舞台」となって公演中!今年乃木坂46を卒業した、生駒里奈さんがヒロインを演じているそうです。

 アニメ化第二弾を熱望してしまう、その作品とは!

『暁(あかつき)のヨナ』に惚れてしまうワケ

 ファンタジーと言うと、中世ヨーロッパや魔法の世界を思い浮かべる方が多いと思いますが、こちらは歴史小説の雰囲気。しかもアジアの。

 時は○○○○年――、と書きたくなってしまうような、中華系の架空の王国『高華国』の年若い姫ヨナと、その護衛で次期将軍でもあるハク、そしてヨナの年上のいとこであり想い人であるスウォンが中心となって繰り広げられる物語です。

始まりは、過酷すぎる初恋

 15歳のヨナは、赤くてクセのある髪を気にする、年頃のお姫様。やさしい王に大切に育てられ、何不自由なく育ち、だからといって高慢ということもなく、ごく普通のかわいい女の子です。16の誕生日に王が祝いの宴を開いてくれることになり、そこには久々に会う憧れのスウォンがやってきます。

 昔と変わらずやさしいスウォンは、ヨナに祝いの簪をくれ、彼女の赤い髪を暁のようだと誉めてくれます。3つ年上の彼は美しい青年に成長しており、ヨナはますますときめくのでした。

 ふたりの幼馴染であるハクは、そんなヨナにほのかに想いを寄せていますが、立場の違いから「ふたり」の幸せを長い、そのふたりを守ってゆく将軍としての未来を望んでいました。しかしその夜、想像だにしなかった事件が起こります。

 なんとスウォンは叔父である王を弑逆!その現場に、ヨナは居合わせてしまうのです!

 駆け付けたハクがギリギリのところでヨナを助け、二人は辛くも城から逃れますが……というところから、物語は始まります。

 少女漫画にしては、なかなか過酷な展開ですよね。自分の「好きな人」が「父」を殺す……。そんなんだったらどうする?と相方に聞いてみたところ、「もう好きじゃないんじゃないかなあ」というお答えが(笑)。

 いや、まあ、そうなんだけどね。でも、そうすぐ割り切れないのが、恋というものでは……?肉親を殺された憎しみと、それでも好きな人だったのにという板挟みが、切ないところなんじゃないの?とか思うのですが、男子はそうでもないのかな?

男前とは彼のこと!!

 こちらがハク。りすのぷっきゅーもかわいい。

 さて、事態を受け止めきれないヨナは、しばし抜け殻のようになってしまうのですが、頼れるハクがしっかり守ってくれるのです。このハクがね、ほんとーに男前で、片思いなのが大変哀れなのですが(笑)。

 高華国は4つの部族に分かれており、ハクはその中の”風の部族”の将軍に認められ、孤児ながら次期将軍の地位についた人物。ヨナにとっては、少々意地悪な幼馴染でしかないようですが、台刀?を操り、齢13で地の部族の将軍を負かしたという話もあるハクは相当な武人でもあります。

 まさに命にかえてもの勢いでヨナを守ろうとするハクは、マジでかっこいいです。古きよき時代の男の見本ともいえ、女性ファンは多いんじゃないかと……。わたしが男だったら、こういう奴を目指したいぜ。

 しかも、強いだけじゃないんですよね。将軍任されるぐらいですから、頭もいい。冷静に彼女のおかれた状況や様子を観察して、何が一番必要かを見極め、行動することができるんです。

 男前なのに片思いすぎるので、実は男性も共感しやすいんじゃないでしょうか……?

 彼の恋がどうなるかも大変気になるのですが、この漫画のメインは、実はそこじゃないんですよね。

人の温かさに泣く姫は

 ヨナはよく泣きます。泣き虫という設定ではなさそうなのですが、けっこう泣く場面が多いんです。

 なぜって、しょっぱなからお父さんを信頼していた好きな人に目の前で殺されてしまうんですから、泣かないわけがないでしょう。しかも、それまでお姫様として幸せにしあわせに暮らしてきたのが、一夜にして命からがら流浪の旅をせざるをえない状況へすっかり変わってしまうんですから。

 でも、それから彼女が泣く時というのは、自分への憐憫ではありません。行く先々で、姫ではない、一人間として対峙したときにふれた、人々の温かさに涙していることが多いんです。

 命を守るため、身分を隠さざるをえないので、国のいたるところで、自分の知らなかった人々の生活を知るのです。そこには、城内で考えられなかったような不便さ、貧困、苦しみが顔をのぞかせていて、それでも自分に優しく手をのばしてくれる人々がいることに、はじめて感謝します。

 また、自分の知らないところで、たくさんの理不尽や困難に翻弄されている人々に対しての、同情や共感の涙でもあります。

 それらを身を持って感じているヨナを見たとき、ああ、これはいい女王になるだろうな、と思ってしまうのです。城の中だけで育ち、あのまま王国のトップとなっていたら、とても得る事のできない幅のある人間へ、彼女は成長していくのです。

王の片鱗

 ハクにつれられ、風の部族の土地まで落ち延びたヨナは、スウォンが即位しようとしていることを知ります。さらに、火の部族から圧力をかけられていることを知り、自分の存在が風の部族に危険をもたらすことに気づき、ハクと共に旅を続けることを決意します。

 敵に追われたヨナをハクは必死に守りますが、追手である火の部族の手勢が多すぎ、窮地に立たされます。

 隠れているようにと指示されるヨナの茂み近くに、火の軍勢のトップ、カン・テジュンが現れ、ハクを射た矢は毒矢であることを知ります。ハクへの信頼から、そして恐怖から、そのまま隠れていようかと考えるヨナでしたが、風の里を出たのはなぜか、隠れて生きたければ里にいればよかったのに、そうしなかったのはなぜか、そして、このままではハクの足かせにしかならない、それでいいのかと自分に問います。

「神に問う前に、自分に問う事があるはずよ!」

と飛び出していく姿に、ハッとさせられる瞬間です。

 そして、今回の事件の裏側をカン・テジュンが知っていた上でのことだ知ると、猛烈な怒りを宿した瞳で、彼をひるませるのです。罪のないハクを殺そうとすること、人の道理に背くことに強く憤るヨナの姿は、以前の可憐で小さな姫とは思えない威厳をそなえていました。

 同時にハクは斬りつけられ、今にも崖から落ちそうになります。ヨナはカンに掴まれた長い髪をとっさに剣で切り落とすと、ハクの元へ走ります。

 ここはいろんな意味で大事で。

 前提として、女性にとって髪は大事なものです。さらに、ついこの前、くせっ毛で嫌いだったこの髪を、テジュンが誉めてくれたことで好きになれた事があったこと。それは裏切られたことと同じくらい、彼女にとっては大きな出来事の一つでもあります。

 それらをふまえた上で、彼女がハクを助けたい一心で、掴まれた髪をバッサリ切って駆けつけるというのは、(恋かどうかは別にしても)ハクは大切な存在であり、自分にとって大事なものはなにかがわかっていて、そのためなら自らの犠牲をいとわないという行動力があることも示しているように思います。

四龍の伝説

 風の里の老将軍から、神官を探しその予言を聞くようにアドバイスされたヨナ。

 そこでは、幼いころから聞かされていた建国神話、「四龍の伝説」の話がカギとなります。

 昔、緋龍が地に降り、赤い髪の人間となって地を治めていたが、力を浴する人間によって国土は荒れた。

 緋龍も捕らえられ打ち砕かれんとするとき、天から四龍が現れる。

 白青緑黄の龍は、一緒に天へ帰ろうと言うけれども、「それでもわたしは人を愛す」と言う緋龍のため、自らの血を人に与え、それぞれの大いなる力で緋龍を守ることができるようにした。

 やがて戦い疲れた緋龍は死に、四龍はいずこかに去っていった。

 というのがだいだいの流れ。 

 神官は、「あなたが生きるという事は、この国に嵐を引き起こすということだ」と説き、このままではハクはあなたを守って死んでしまう、味方を、四龍を探しなさい、という神の声を伝えるのでした。

 ヨナ自身、王は何代も入れ変わっているし、自分は緋龍ではないと言うのですが、ここからが伝説と興亡の物語になるのです。

 四龍たちが初めてヨナと出会うとき、必ず感じる、血が逆流するような衝撃と、響き渡るような龍の言葉……これを守り、愛し、決して裏切るな、という場面がとても印象的です。一方のヨナはそういうのが全くないのが面白い(笑)。ハクのことといい、このコは、自分が周りへもたらす影響がわかっていないのかもしれないですねえ。

ヨナに学ぶヘッドハンティング

青龍くんと白竜お兄様。

 ここからは、「四龍を探す旅」の始まりになると共に、ヨナによる人心掌握術講座としても読めるんです。これから起業したい方や、ビジネスマン必見です!(笑)。

 ヨナが言うには、「自分と仲間が生きるため、神の力を借りたいという不届き者」なのだそうですが、「待ってました!」という白竜もいれば、「去れ」という青龍もいるんですね。

 そこでヨナがどういうスタンスかというと、「力を貸してほしい」という「お願い」なんですね。

 だから、なかなか姿をあらわさない青龍については、「あまり会いたくないのかな?」と察し、話してみた上で、彼が嫌だというならその意思を「尊重」するんです。これは、なかなか珍しい展開だと思うのですが。

 「だったら青龍はあきらめよう」と言うと、仲間のほうが、いやいやそんな!というんです(笑)。

おまえがほしい!

 そもそもヨナの人材の口説き方がすごい!です。

 まず最初のハクについても、彼はヨナを風の里に平民としてかくまい、自分は将軍の名を返上して旅に出ることで、姫と里の危険を回避するつもりでした。その場で道を分かつつもりだったのです。

 しかし、同じように里にとっての危険を察したヨナは、二人で里を出ようと考えます。そして、もはや従者ではないと言うハクに、

「おまえがほしいもの!」

「ハクをわたしにちょうだい!」

 と言ってのけるのでした。

 いやいや、好きな子にこんな事言われちゃね、ハクが断れるわけもないですが(姫はそれを知りません)。

 でも、なんという口説き文句と思いませんか?この、「おまえがほしい」というのは。このセリフを使う場面は、恋愛のみならず。

 実は白龍にもかけられる言葉で、そのままだと立場的に上からの言葉(姫、主、緋龍)ですが、非常に強い言葉です。

 あなたのその能力がほしいのだと言われ、嫌な気がする人がいるでしょうか?仕事なら、素直に「えーっ♡」ってなる人、「……しょーがないなー」ってなる人、反応はさまざまでしょうけど、基本いい気分なことには間違いない!(笑)。

 また、はじめ「お役にたててない感」を感じる白龍に対しての「声掛け」も抜群で、「お前もいなきゃダメなのよ」という特別感と自信を抱かせるんですね、彼女は。

 ハクに関しては惚れた弱みもあるけれど、白龍の時は、待ち焦がれた主という面もあるけれど、基本ヨナは「自身もがんばる」コで、「手を貸したくなる」人物でもあります。

 たとえば、自分が守られてばかりではなく、なにかできることがないかと考え、自ら弓の練習を始めます。人知れず夜中に200本、旅をしながら打ち込む姿は、仲間の心を打ちます。

 そういった人としての信頼があるうえで、ああいう口説き文句や声掛けをされたら、心を掴まれてしまうと思います。

 ヨナは、「俺についてこいタイプ」というよりは、こういった「みんなが支えたくなる」タイプだと思います。

 自分は「ついてこいタイプ」だなーと思う方は、チームに一人「支えたいトップタイプ」を入れておくと、全体のバランスがうまく保たれるかもしれません。いずれにせよ、彼女の言動は、部下を持つすべての人の参考になりそうな気がします。

圧政への気づき、スウォンの本意

 物語を深くしているのは、庶民へのまなざしです。

 旅すがら、ヨナは城のこと、ひいては国と民のことを何も知らなかったことに気づいていきます。

 はじめ王様は、優しくてぽよんとしたいい王様として描かれています。武器を嫌い、姫に剣を取らせることはありませんでした。しかし一方で、臆病な王様とうわさされてもいました。

 旅の途中では、王が(少なくとも統治が)好かれていなかったことがわかってきます。

 貧しく枯れた土地があり、税に、生活に苦しんでいた民は、「次の王スウォンは、よい王だといい」と漏らすのです。ヨナは父として王を愛しているけれども、民が苦しんでいたことを知ると、そのままでよいわけではないと思うのです。詳しい事はわからないけれども。

 さらに、スウォンが王を殺した経緯についても、王と叔父の間に血なまぐさい話があり、それが本当か否かはわからないながらも、スウォンの動機になっています。

 高華国周辺の政治状況も不穏で、王と部族のパワーバランスも怪しかったこともうかがわれます。

 スウォンは、ずいぶん前からひそかに反乱を画策しており、その時、ヨナとハクは側にいないことを覚悟していますが、決してそれを願っていたようには思えません。

 弑逆の夜、ヨナがあの場に来ることは予想外だったようです。

 ということは、彼の本意はどこにあるのか?

 おそらく、殺された王の治世は、限界に傾きつつあったのではないかと思われます。優しいがゆえに、周辺からなめられ、ひとたび戦が始まれば、それを防ぐ手立ても怪しかったのではと。また、二重帳簿の存在が明らかになり、役人の腐敗によって人々が苦しんでいた節もあります。王がそれを知っていたかは不明ですが、知らなかったのではないかというのがわたしの見立てです。

 そこで、少なくともスウォンは、個人的な恨みとは別に、強い国へと立て直すことを目的に掲げていることはたしかです。

 ヨナが望むかはわかりませんが、もし、自身が生きるために王座を奪還したとしたら。その時に、この旅で見聞きしたことが大いに影響することは間違いありません。彼女は理を大切にした統治を行いたいと思うことでしょう。少なくとも、父王とはまったく違う評価の治世を行うと思います。

 そしてもうひとつ興味深い事は、もしかしたら、「庶民にとっては」スウォンはよい治世を行う王になる可能性もあるということです。長年の本心を幼馴染に隠し通したスウォンは、へなっとしてみせて、かなり頭が切れる人物のように思います。資金不足の部族に、それとは悟らせずに金策を授けてみたり、ヤバいこともやれてしまうのは、ある意味の強さ……。

魅力的なイケメンたち

 天才美少年ユンくん。

 少年漫画だと、こういった物語には、屈強で筋肉もりもりの人物とか、見た目がインパクト大の人物が出てきそうですが、こちらは夢のある少女漫画なので、いずれもイケメン揃い。老いも若きも、風の部族のムンドク様から、ハクの幼い弟まで……いや、赤ちゃん時代の青龍がいました。みんな素敵なのです!

 スウォンは優男風の女性的な雰囲気。神官さまも同系列ですよね。

 ハクは、長めの前髪で黒髪の短髪。上背があって鋼の肉体っぽいところが男らしい!彼の自制心は相当なものだと思っています。

 天才美少年ユン君は、小柄で細身で女装も似合ってしまう。はじめはキツイ物言いもするけど、実は感激屋だと思う。デキる人物です。

 白龍は美しい顔立ちと、世間知らずな優等生だけど誠意があって、面倒見もよい感じ。

 青龍は、美しい目を持つ青年。どこかパンクな青髪です。仮面かぶってたし、おとなしく言葉少ななので誤解も招きがちだけど、中身は優しい。生い立ち的に母性本能をくすぐられるタイプかも!

 緑龍はモテるタイプですね。長い緑の髪と束ねたタレ目で、女の子になら誰にでも優しいタイプ。変態の称号を得たりしています。人をよく見ているので、器用だと思います。

 緑龍と黄龍と癒し系ぷっきゅー☆

 地の将軍は、鋭くはないけれど、豪快で頼もしいタイプ。

 火の部族のカン・テジュンは、野望を持っているけど、ちょっと線が細いかなーと。どこかスネ夫的存在?でも、人間らしくて興味深い人物。

 風の部族のムンドク様はなかなかの人物。懐が深い。片目に傷が!こういう老戦士はたたずまいが素敵です。(たしか、顔に傷のある男性は女性にモテるって現象があるらしいですよ。闘って生き残ってるってところに、生命力を感じるんでしょうか?)孤児でも大事にして、よい戦士に育て上げるベースには、すべての人への愛情があると思います。

 実は漫画でちゃんと読めたのは3巻までで、あとは黄龍と出会うまでのアニメ化をメインに見たので、その後はまだわからないのですが――なので、まだ完結してないヨナの物語のアニメ化第二弾を熱望しています!!

 でもまだ連載中ということは、完結してからっていうことになるのかしら……?(ちなみに在、アニメは「dアニメストア」で見られますよー。最初のメインテーマ曲「暁のヨナ」もいい感じです!)

 ハクの片思いはどうなるのか、ヨナは王座をとるのか、スウォンと戦うのか、そもそも伝説によるとハッピーエンドじゃない気もして心配なんだけど、みんなには幸せになってほしい!

 というわけで、舞台「暁のヨナ~緋色の宿命編~」が2018年11月15~25日まで公演中なんだそうです!

 個人的には、タレ目じゃないけど緑龍役の西川さんがかっこいく見えます!スウォン様もお美しい。お時間ある方はのぞいてみてはいかがでしょうか?

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