美味しい日本酒はもちろん大吟醸!雑味の無い綺麗な味わいでお使い物にも最適、酒屋の店員さんもおススメしてくれる間違い無しの一本・・・でもちょっと待って。日本酒には別の顔があります。実際に飲んでみて、その価値を計ってみてくれたら嬉しいです。
低精白・自然派仕込みとは
日本酒は米・米麹・水から造られます。原料となる米は最初は玄米ですが、精米機で磨かれてから日本酒の醸造に用いられます。大吟醸という名称は、玄米から50%以上磨いた米のみで造られた日本酒だけが名乗れます。たとえば精米歩合45%とか30%のものです。低精白とは、逆にあまり磨かない米を指します。例えば精米歩合80%とか90%といった具合です。一般的に低精白米で造った酒=安くて味もそれなりのお酒、と思われがちですが、この分野に本気で取り組んでいる蔵元もわずかにあります。
自然派仕込みとは、いわゆる”生酛’(きもと)・山廃酛(やまはいもと)・水酛(みずもと)”などと呼ばれる、空気中の天然の乳酸を製造工程で取り入れる仕込み方法です。一般的に蔵元は空気中の天然乳酸は扱わず、液状の乳酸をよそから買って添加するのですが、これは腐造という、清酒製造の失敗を防ぐためです。
つまり、自然派仕込みは空気中の天然の乳酸を扱うため、日本酒の製造においてリスクがある事になりますが、自然派仕込みでしか表現できない個性を持った逸品も産まれます。
遥か昔は、日本酒の製造は低精白・自然派仕込みが当たり前で普通だったはずです。私がこの分野に興味を持ったのは、最初に取り上げる小布施ワイナリーさんの日本酒”ル サケナチュレル90″があまりに衝撃的だったからです。もしかして、江戸時代の日本酒は今よりもっと個性的で美味しかったのでは?そう思わずにはいられません。
ル サケ ナチュレル90シリーズ
定価:確か1500円位だったはず 製造元:小布施ワイナリー(長野)
このページを作ろうと決心させてくれた偉大な日本酒です。90%精米・生酛仕込み・生酒。私はそれを古酒として飲んだワケですが、すっかり魅了されてしまい、その結果このページを立ち上げました。本当に良質な酒米は、むしろ米を磨かないほうが良い酒が造れる、そんな考えにさせてくれた私の歴史に残るお酒でした。だって90%精米の生酒ですよ?そういう日本酒でしか到達出来ないであろうこの旨さは、、、ずるいというか、本業がワイナリーというのがまた粋な感じです。
穏(おだやか)生酛純米 生
定価:2600円 製造元:仁井田本家(福島)
80%精米・生酛仕込み・新酒。お米の栽培からこだわっている、個人的に注目している蔵元の一つです。しっかりした旨味・酸味があり、しぼりたてのフレッシュ感もありますが、それがまだ硬い印象があり、多分しばらく寝かせるともっと味が乗って美味しくなる気がします。なので、我慢してしばらく置いておくつもりです。穏(おだやか)シリーズは価格も手ごろで、今の低精白酒の美味しさを気軽に楽しめる1本だと思います。※開栓1週間くらいすると、味わいにまろやかさが出てきて、バランスが良くなりしっかり美味しくなりました。
新政 涅槃亀(ニルガメ)
定価:1700円位 製造元:新政酒造(秋田)
90%精米・生酛仕込み・木桶仕込み。今大人気の新政の低精白酒です。裏のラベルの製造年月が2019年4月、出荷が2020年1月とあるので約8~9カ月寝かせたお酒という事になります。味わいは・・・何かを確かめるようにちょびちょび飲んでみましたが、一言で言うと不思議な味わいです(笑)。ヨーグルトの上澄み液みたいな香味が印象的で、これはたぶん木桶仕込みの効果なのかなと思います。今飲んでも完成している気はしますが、3年5年と置いて一体どうなるか全く想像がつきません!低精白自然派仕込みの分野、とてつもなく奥が深い気がします。
香取 自然酒純米90
定価:720ml 1090円 製造元:寺田本家(千葉)
90%精米・生酛仕込み・酵母無添加(野生酵母)・無濾過・火入れ。酵母まで無添加の本物の完全無添加酒です。無濾過のため、色が濁った山吹色で逆に期待させてくれます。常温でそのまま飲んで見ると、野生酵母の力なのか、凄くワイルドな感じですが何故かキレはよく、それほど後に残りません。一口呑んで『これは温めよ』って感じて燗にしてみると優しい風味になり美味しく飲めました。このお酒の良い所は1090円という価格で、無駄に高くしたりせず、素直な値付けが好印象です。それと、首掛けに書いてある通り、何となく健康に良さそうです。
御前酒 TRADITIONAL
定価:1800ml 3000円 製造元:辻本店(岡山)
酒米の一種”雄町米”と古代製法”菩提酛(ぼだいもと)”にこだわる今注目の蔵元です。精米歩合65%では『低精白』とは言えないかもしれませんが、旨いんだからOK!このTRADITIONALタイプは3年熟成ものになりますが、一口目でビビビッ!ときました。間違いなく上記の『ル サケ ナチュレル』系統を思わせる味わいで、ただ放っておくだけでは出ない上品な密感が、菩提酛の可能性を感じさせます。これは、あと3年、5年と熟成させても素晴らしい状態で楽しめるんではないでしょうか!
ル サケ ナチュレル90 2020最新版
定価:375ml 1250円 製造元:小布施ワイナリー(長野)
古酒だけでしか味わえてなかったナチュレル90ですが、2020年は出荷したての新酒を味わう機会に恵まれました。で、結論から言うと・・・今飲んでもまぁ良いんですが、これは絶対3~5年寝かせて熟成酒として飲みたい!今飲み切ってしまうのがもったいないと感じました。あの古酒で感じた濃密な密感の片鱗はありますが、それが新鮮な酸味と新酒っぽい硬さで覆い隠されているような感じで、今の状態ではバランスがイマイチかなと思います。でも、これが熟成で調和されたらとてつもなく旨くなる、そう確信しています。だから2本買っておいて良かった~!
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