新書を読んでみた。

 政治とか国際情勢なんてよく知らないんだけど、海外ドラマの『24』とか、大統領が出てくるような政治ものの作品を見ていると、政治の駆け引きって、ちょっと面白いなあと思ったりしています。

 ドラマの中では、こっちの人が正しいんだけど、弱みを握られててそれを実行できないとか、これを進めるためには取引せざるを得なくて、苦渋の選択であっちを取らなきゃいけないとか。逆に、有利に進めるためにどうなのって手を使うとか、なんか正しいだけでは進められないから知恵をしぼってどうにか逆転しようとしたりするところが、ゲームにも似て面白いなあと。たぶん、歴史小説とか好きな人にも通ずる感じじゃないでしょうか?

 でもこれ、ドラマだから「面白い」だけで見ていられるけど、現実世界じゃどうなんだろう?

グローバルな世界で、日本はどうなるの?

未来を知るには

 ニュースとか見ていて、国際情勢が急激に変わって、戦争やら難民やらなかなか終結してないし。なにが起こってて、日本ってどうなるんだろう?と興味をもって、読みだしたのがこの新書『世界を戦争に導くグローバリズム』です。

 ちょっと恐ろしげなタイトルなんですが、そうなっちゃ困るから、どーなるのか情報を仕入れてみようと思いました。古本なので2014年刊ですが、最新でないゆえに、現在からみた検証もできるのでは?そして、なかなか面白かったです。

 要約するのが苦手なんですが、内容をざっと説明すると、

 オバマ大統領時代に刊行された本。これまでにアメリカのとってきた動き――過去の戦争やその原因、日本、中東、ロシア、中国の動向も「国際政治経済学(いかにして戦争のない世界をつくるか)」というアプローチで分析。その戦略は正解だったのか、失敗だったのか。不安定な現状を招いたのは、夢のような「グローバリズム」が原因なのではないか?いまや「世界の警察」ではいられなくなったアメリカと同盟国の日本に、今後何がもたらされるかを、日本人は知らずにいてよいのだろうか?という本です。

 ちなみに、「新書」というのは、新しい本の意味ではなくて、単行本サイズに似てるけど、より背が高くて幅は狭いサイズの本(主に中身は教養系)のこと。らしい。

名前は「理想主義」なのに、中身は理想的じゃないじゃん!

 さて。まったくの未知の領域の話を理解するには、聞いた事もない言葉とそれが表す内容を知ることが必要になりますよね。

 本書には理想主義と現実主義って言葉が出てくるんですけど、「主義」ってのは、考え方のスタイルのことですよね。なので、知識がない者としては、まずはイメージであたりをつけてみたりします。

 たぶん、「現実主義」の方は、「夢みたいな事言ってないで実行可能なことをやれとか、従来のやり方を守っていこう」というような保守っぽいものの感じがする。「理想主義」のほうは、反対に「慣習にとらわれず、新しい事もやり、理想的な世界に近づけていこう」みたいな、リベラル(本来の意味の)な感じかなと思って読み始めました。

 わたしとしては、理想に向かって頑張る方が、そりゃ素敵だろう。と思って、理想主義のが優れていそうと読み始めたのです。が、結果、なんだか思ってたのと違う!理想のはずなのに、これ、全然理想的な世界になんないじゃん!とびっくりすることになりました。

 ちなみに、国語辞典の説明には

□理想主義「ある理想を持ち、それを実現するためにどこまでも努力していくという考え方」

□現実主義「物事を実際的な立場で判断したり実行したりする人。(自分の利得につながるかどうかという観点から物事をとらえる人のことも言う。)」

ということが書いてあり、わたしの持っていたイメージと、それほど違わないものに思えるのですが。にもかかわらず、なんで驚くことになったんでしょうか。

誰発信の理想なの?――普遍ではなかった。

 まず、世界の大きな動きをみると、第二次世界大戦、冷戦の後、アメリカを中心に世界は動いてきているので、アメリカという国を知る事が重要になります。

 近年は安定秩序のために「世界の警察」として、他国であっても、虐殺など人道に反する事には介入したり、9・11のテロに対しては「中東を民主化する」ことで平和を目指そうとして失敗。かえって現在まで続く泥沼化戦争が起こったり、サブプライムローンの危機発生時には世界中の経済に打撃を与え、格差が……とかいろんなことがありました。そしてアメリカが、世界警察の役目を果たそうにも、経済、信念、世論的にもムリじゃね?となった時期に書かれたのがこの本。

 そして今トランプさんなわけです。一見「俺(自国)さえ良ければ良いんだ」とわがまま放題にも思えますが、外交政策に限って言えば、だれが大統領であろうと流れはこうにしかならなかったのかも……と思えてきたりします。

 話はそれましたが、アメリカの外交には大きく二大潮流があるそうで、それをもとに、どのように外交をするか、政策を打つがかが決定されいくそうです。

 その二つというのは、

「国同士の力関係を重視」する現実主義と、

「価値観を重視」する理想主義があるそうです。

ん?価値観?どういうこと?と思いませんか?

 ここでいう価値観というのは、アメリカが建国以来ずっと大切にしてきている、自由や民主主義のことなんだそうで、「自由で民主的なスタイルを実現していこう」という考え方のこと。

 つまり理想主義とは、「アメリカ」にとっての「理想の価値観」の主義のことで、中国とか、ロシアとか、「どんな国にも当てはる普遍的な意味の理想」という意味ではないってことですね。(アメリカ寄りの日本には、当てはまるのかもしれないけど。)

 そういった「米国の理想的価値観」の世界を実現しようとすることは、逆に、「それ以外の価値観は認められない」世界を作ろうということになります。だって、そうしないと理想の世界作れないじゃないか、ということらしいです。

 でも、多様性を否定することは、「相手がこちらの価値観を受け入れないのなら、武力行使に出てでも実現しよう」という、とんでもない暴力を生み出すことになってしまい。

 いや、怖いですよこれ。

 あんまリアルに考えると怖いので、例えば……突然宇宙人がやってきて、「今日から宇宙語を話し、宇宙人として暮らさなければ、殺しますよ」って言われるようなもんでしょう。

 きっと、なんで?って受け入れられないし、はあっ?って頭にきつつも、殺されそうになったら逃げるか戦うか従うかしかなくなって、日常は破壊され、それがいつ終わるかわからない状況になるってことですよね。つまり……シリアの難民とかが、まさにこの状況ってことなわけか、と。

 「理想」という言葉の持つイメージと裏腹に、真逆の結果をもたらすという理想主義のジレンマ。

 かえって、自国の利益重視で勝手に戦争始めそうな「現実主義」のほうが、「現実の世界」を視ているから、理想を押し付けることはありません。害がない限り、そっちはそっちでこっちはこっちだ、と共生を選ぶので、結果的に多様性に寛容なんだそうです。

 こちらもこちらで、例え他国で虐殺がおきようとも、「内政には干渉しない」ため、自国に利害が無ければ見て見ぬふりをする(から被害者は救われない)っていう面もあるので、完璧ともいえないようですが……。

現実主義のように見える理想主義?を、ブッシュさんで。

 具体例を挙げると。

アメリカの「ブッシュ大統領」は、親子二代で大統領を経験した人たち。

 父であるブッシュ・シニア(89-93年)は現実主義でしたが、息子のブッシュ・ジュニア(01-08年)は理想主義の方針だったそうです。

 父のほうは湾岸戦争でイラクと戦うも、「敵」を追い払うのみで、「フセイン政権の秩序は温存し、中東のパワーバランスをヘタに崩さないほうが秩序も保たれる」と判断。現実主義をとったのでした。

 しかし、息子さんの時はどうしたかと言うと、9・11のテロとの戦いや中東を民主化するという理想主義を実行。大量破壊兵器がある、とでっちあげ(当時は事実とされた)を根拠として侵攻。フセインを打倒したものの、秩序を回復させることも、民主化を推し進めることもできず、結果大失敗に終わってしまったのでした。その混乱は今も続きます。

 二代目の宿命なのかわかりませんが、たしか、バカ息子ってテレビで呼ばれてた記憶があるのですが……。

 その息子さん、地球環境をよくするためのはずの京都議定書から離脱してみたりと、自分勝手さが一見、現実主義にも見えるんだけど、「アメリカの価値観による世界の秩序」というのが理想主義の目的で、中東の民主化を目指して戦争仕掛けたので、理想主義の分類になるんだとか。

 って、なんか言葉遊びでもしてるだけかのようだけど。分析とか研究においてはそういうことになるようです。

 さて、本書によると、この理想主義というのはなかなか厄介な法則を持っているらしく。

 歴史をひもとくと、第一次世界大戦後の秩序は理想主義で構築されたけれどもうまくいかずに、第二次世界大戦が勃発。つまり失敗に終わることに。

 冷戦後に再びアメリカは理想主義を掲げたけれど、イラク戦争でも失敗。つか泥沼化。そもそも理想主義自体、非現実的なのに景気が良いとなんか楽観して進めちゃったり、ただの既得権益の偽装に成り下がっていたり、時代や環境の変化に対応することができないので、失敗するんだそう。

 そこで、次のオバマさんは現実主義にゆっくり転換。その時の日本、第二次安倍内閣はどちらだったかというと、「あきらかな理想主義」。

 ん??同盟国なのに、方針違くないですか?大丈夫?

 2013年のTPPへの参加について、安倍総理は「自由や民主主義、法の支配といった普遍的な価値を共有する国とのルール作りは、安全保障上の大きな意味がある。」と発言。うん、たしかにこれは「価値観」って言ってるし、「理想主義」になりますね。安全保障大事だし。

 しかし、オバマさんは、安全保障の話など、一切演説していないんです。「アメリカの輸出、雇用を支援し、アジア市場の競争を公平にするためにTPP交渉をする」ということしか言っていない。自国の利益重視、これは「現実主義」ですよね。

 理想主義の方が演説としては耳ざわりはよいので、本当はもっと現実的に考えて日本も外交をしている可能性もあるが、そうではなかった場合、悲劇しかないのではと著者は危惧していたようです。

 4年後の現在、理想主義の失敗からの秩序崩壊である戦争はありがたいことに起こっていないけど、万が一の場合、アメリカが日本を守る気はなさそうだよな……とは思います。

 ちなみに、ヨーロッパでは、地理的に陸続きの国々のため、歴史的にずーっと抗争があったけれども、アメリカは敵となるような大国が近くに存在せず。19世紀のアメリカは、国際政治に困るような状況にいなかったので、20世紀になってから初めて、厳しい局面を経験することになったらしいです。政策形成の合意がとても苦手だし、国家政策の関心も薄れた国内で、よい政治家になるには必須の人文教育がないがしろにされ、ビジネスや職業訓練が中心だった指導者層によって、理想主義しか打ち出せなかったのではないか、というリップマンという人の分析を引用し、著者は「なんか日本に似てない?」というのです。

 地理的に孤立しており、異文化との高度な外交力がなくてもよかった生い立ちを持っている日本。現在グローバリズムによって、世界とぐっと距離が縮まったことにより、イスラム国のようなはるかな土地のテログループから名指しされるような事態も経験。国内でも、沖縄の駐屯兵に地元民が襲われても、長年解決できず繰り返されているし、交渉が得意なイメージ自体、あんまりないような。報道されないだけ?

 それにしてもこの本を読んでいると、国同士は結局、仲間ではなくて、外の国でしかないってことになるんだなーと。

いい人すぎる日本?を、ちゃんと見る

 正直、日本がアメリカを敵視するようなことが起こるとは思えないんですが(考えてみれば、敵国として戦った歴史もあるわけだけれども)。

 ハリウッドスターは日本でもスターだし、映画、音楽、ファッションも人気は高いし、英語が流ちょうに喋れるのは日本ではちょっとしたステータスじゃないでしょうか?テレビのコメンテーターも、なぜかアメリカ出身の方がキャスティングされていたりして。

 これだけどっぷり友好的に見えるにも関わらず、国として動くとき、、なんとアメリカは日本を信用していなさそうなのです。かつてのような力を持たれたら困るから、その抑止として、という戦略をとっているらしい。

 え。そんな必要あります?なんて思ってしまうくらい、わたしは心外なんだけど(笑)。

 でも、国としては、その考え方、通常なんだろうなーと。

 結局日本って、いい人なんだろうな(笑)。

 そのピュアさを好きになってくれる相手もいれば、じゃあだましてやろうという相手もいるってことを、治安のいい日本では感じることが少ないんだろうなと思いました。海外旅行ではスリや置き引きや夜間の外出は気を付けて、っていう注意がされるし、それが世界の日常の標準感覚なんだと考えると、やっぱり日本て、いい人すぎる。

 同じ理由で、安倍総理が靖国参拝をしたことで、アジア周辺国から特に批判を受けたことがあったけれど。あれは、無学のわたしでも「当時の状況的に」やらないほうがいいんじゃないかなーと思った出来事でした。

 参拝するほうは、少なくとも、かつての日本のように、どっかを侵略しようなんて思ってないと思うし(たぶん)、日本には亡くなった人に良い悪いもないという文化があるし、ただ霊を慰めるというか、そんな気持ちだったであろうことはわかりきっていると思うんです。

 個人の行動にどうこう言う権利が誰にあるの?とも思うけれど、ただ、あの時の状況として、やっぱトップとして「海外からどのように見えているか?」というのは、やはり考えるべきポイントだったんじゃないかと。

 まあ、よそに安易に従いませんよというメッセージだったのかもわからないけど、周辺がピリピリしているときは、「海外の日常の標準レベルでどう見えているだろうか」も考えないと、あらぬ誤解で不安な気持ちを相手側に抱かれては、こっちも得しないかもなとは、思ったりしました。

 あとは、なんでも欧米ではこんなことが最先端だとか、医療にしても、システムにしても参考にしているけれど、もしかしたらアジアのほうが実は最先端だった!て分野だって、あるんじゃないかと思ってみたりして。

ほんとにいろんな人がいる

 人権という価値観から、ついこないだの「クリミア戦争」なんかをみると、なんてずる賢い姑息な手段を!と思ったんですが(ロシアが、正体不明の軍隊としてクリミアに侵入、制圧をして最終的に実効支配した。まるで映画のようです)。

 ロシアからしてみれば、広大な自国のはしっこに位置する、ロシア民も多く住む、かつては自国領だった場所で、「海外勢力の門となりうる重要な拠点」を取り返した、つまり「自国を守るための行動」だったとか。さらに、地元民の投票も行って、クリミアの人がロシアになるって言いましたよ、との手続きも一応踏んでいるそうで。

 それと比べると、理想主義のアメリカの中東への介入はめちゃくちゃで、それまで支援していた国があったのに、自国の方針にあわないからといって、急に反対の立場にいた国を支援しはじめたとか。

 それによって、「信じられねえ」と中東の同盟国の信頼をなくし、現地のパワーバランスを崩すことに。さらにアメリカは「俺ら世界警察ですし」ということで、「国連でみんなが合意してから介入ね」、という決まりも破って武力行使。なんと収拾つかなくなった上に、撤退。現地の一般人戦乱の渦中に置き去り。という、なんか、こっちのほうが輪をかけてひどくない?っていうことがあったりしたようです。

 撤退出来るのも、わざわざ出かけていくほど遠い国に首を突っ込んでいたからで、もともとひしめきあっている現地としては、撤退の選択肢なんてないし、大迷惑以外のなにものでもないのでは……。

 あまり触れなかったけれど、世界の安全には経済も重要で、お金がある⇒戦える⇒理想を実現できるという流れになるそう。

 そこで、アジア市場のうまい汁を吸おうと、アメリカが中国を支援。それにより、中国はどんどん成長し、力をつけ、なんと世界の覇権を狙い始めるということに。アメリカが中東で大失敗したことで、勢いづかせてしまった形になっているのだとか。中国が人権とかルールを守ってくれる国であればまだいいかもしれないけど、どうもそんな感じではないですよね。しかも、日本とは微妙な関係だし。ああ、なんとゆーことを……。

 というわけで、この本を読むんだことにより知ったいろいろなことに、なんだか絶望も感じそうになるんですが、やはり、知るって大切で面白い事だなとあらためて思いました。

鍵となる資料「グローバル・トレンド2030」

 このアメリカ、国の方針をどうやって決めているかというと、世界の予想図を基にしてるんだそうです。「グローバルトレンド2030」という資料なんですが、4年に一度、新しい大統領着任に合わせて発行されているらしい。国家情報機関という諮問機関、つまり頭のいい人たちが世界情勢を分析して、きっとこうなっていくだろうという未来予測をしているんですね。

 それをもとにして、国益なり価値観なりを実現するために我々はどうするか?と政策を決定しているんだそうです。未来の事なんて未知のことなので、その資料が正しいかどうかはここでは問題ではなく、少なくとも「アメリカは未来をそう捉えていて」、「それに即して外交戦略をする」という「事実」があるんだ、ということ。

 つまり、これを読めば、アメリカのとる行動方針が予想できるってことになります。

 なるほど。このことを知って国際ニュースを見ると、たしかに、たしかに流れがそうなってるんです!!わー。すごい!

 そして、「2030」にどんなことが書いてあったかというと、

 「中国が台頭してくるだろう、アメリカは世界警察から撤退するも、主席は保持。新たな覇権国家が生まれるというわけではない。」

 中国なんかは、もっと長期の視点を持っているらしく、なにかで見かけたんですが、100年後くらいには、日本も中国になってるんじゃない?て、中国の一般人といわれる人がインタビューに答えたりしてたような。

 「えっ?日本が……つか、100年後って?へ?」とか思ったわたし。中国になってる云々もですが、それ以上に驚いたのが、政策って100年後とか視野に入れたりもするのか……という点でした。一瞬、さすが悠久の国(らしい視点)と思ってしまった。

 だって、日本とか、そこまで考えて政策打ち出してるイメージ全くないから。国内の話だけど、高齢化、少子化、年金その他すべてその場しのぎっぽいし。問題あるとわかってても、すぐ対応するよりは慣習に従っちゃう雰囲気がするし。

 未来予測に戻ります。「さらに、日本、ヨーロッパ、ロシアは衰退。2020年代に中国が世界最大の経済大国に。」

 うーむ。いろんなマナーや常識からはみだしていて困ることもある中国ですが、それを改善してくれようがくれまいが、貿易上も関わっていかなければいけないことだけははっきりしているということですね。そもそも隣国だし、当たり前なんだけど。

 てことは、こちらが利益を、少なくとも損をしないようにするにはどうすればいいかは考えなくちゃいけないし、その手段は、関係をよくするのか、厳しくするのか、仲間の国と圧力をかけるのかとか、相手の性格も踏まえていろいろ考えないとってことなんだろうなあ。

「グローバル経済にとって重要になるのが、中国、インド、ブラジル、コロンビア、インドネシア、ナイジェリア、南アフリカ、トルコ。アジアがGDP等パワーにおいて、北アメリカとヨーロッパを凌駕。」

「東アジアの秩序は

①現状維持

②アメリカ関与の減少でアジア諸国の均衡により多極化

③中国が政治的に自由化、平和な東アジア共同体に(楽観め)

④中国による排他的な華夷秩序が成立する(インドが台頭に失敗か、日本が衰退から逃れられない場合)」

のどれかになる可能性がある、と予測。

 2018年の最近でいうと、たしかに敵対しそうなアメリカと中国が、なーんか日本をほっぽって歩みよってませんかね?ってニュースで思ったり、

 あ、トルコ。中東のジャーナリスト殺害事件についてテレビ出てたな、テロ組織による邦人の解放に関係してたなあ、って。短絡的かもですが、なんか思いついてしまいます。トルコは親日国のようですが、解放の件で日本は恩があるってことになったな、とか思ったり。

 国際ニュースの大きな流れについては、前はえーっそんなことになっちゃうの?とか思ったけど、この予測を知ってからは、いちいち驚くことではなくなった気が。だってそういう予測の元に動いているんですもん、そうなるよね……って。

3つの力

 もう一つ学んだことですが、政治にはパワーが不可欠で、国際政治における力とは、

「軍事力」「経済力」「意見を支配する力」 

の3つの要素が相互に関係しているということ。これが戦争とも大きく関わっているということです。

 この三つはそれぞれ専門分化が進んでしまっているけれども、総合して把握し分析しないと、意味がないんだとか。どういうことかというと、

○ 現実世界では、軍事的な安全が確保されてこそ、経済活動が可能となること。確かに、銃を打ち合ってるような戦闘地域で、今年の洋服のトレンドはこれだからあれ欲しい、なんて悠長なことはできませんよね。

○ 経済力は政治的手段にもなる(19世紀イギリスの自由貿易帝国主義)

特に七つの海を支配していた時代だと思うんですが、たしかにお金もあって世界の情報も手にしていたら、そりゃあ世界を手中にできますね。お金にものを言わせて従ったり協力させることもできるでしょうし。ってこと?

○ 例えば、王様が絶対的な権力を持っていて、誰も反対できなくて苦しむ民衆が立ち上がって、王政が廃止されたりする歴史上の出来事がありますよね。やがて世論が政治に与える影響が大きくなる時代が来て、なにか問題がおこると辞任を余儀なくされたりと。そこにもパワーがあるということで、逆に、広告による影響力を行使すれば、人々を動員できるというのが意見を支配する力。(これもなかなか怖い事ではないでしょうか?メディアを乗っ取ってしまえばフェイクニュースで国を操ることもできるってことになりませんかね?)これは経済とも切り離せない。

 しかしこれらも、大国がパワーを独占しているときは安定しているが、そのパワーがなくなった時には、その秩序は崩壊し、忘れ去られていた国家間闘争「パワー・ポリティクス」が前面に復活。

 そしてこれらのパワーは分割することができないので、そもそも軍事力を他国に依存するような国、つまり日本は、本来経済的な繁栄をすることは望めないはずでした。

 にもかかわらず経済成長できたのは、アメリカが自国のためにも日本の安全保証&支援をしたという、ラッキーな状況だったから。だから冷戦後、日本は「失われた二十年」という経済停滞に陥ったと分析できるようです。

 さらに、戦争には4つの側面があり、「作戦、兵站、技術、社会」がうまく組み合わなければ勝利できない、ということらしいです。特に先進国では「社会」が大きく要因を占めるので、作戦が可能かどうか以上に、言ってみれば気持ちも相当大事ってことらしい。その戦いにに意気込みやメリットがあるかどうか。コストを許容できるかも含めて。

「海外では余計な口出しをせず、他国に任せるべきだ」という人が多ければ、世界の秩序のために、はるばる中国や中東にでかけて行って戦い、コストをかけてアメリカが世界の覇者であり続けようとは思わず、そこそこで撤退して現地にまかせよう、というようなことになるようです。

 世界秩序を保つためにはコストがかかるという、いやはやなんとも身も蓋もない話で……。

 まあたしかに、ボランティアではないんだから、何かをするにはお金が必要になるわけで、赤字になって国が破綻しては困るし、その収支を計算するのも当たり前なんでしょうけれども。平和の価値って無限大ではないの?赤字覚悟でやるようなことではないの……?とか勝手なことも思ってしまったのでした。

感想

 というわけで、この一冊で、ざっと世界史とか、専門的な分析とかに触れながら、日本の立ち位置と、考えられる未来が見え、同時に各地で起こる大問題や悲劇も知り、

 とても興味深く、ちょっと危機感をあおられたり、絶望しかけたりしてみながらも、面白く読みました。

 1930年代に発表された国際政治理論をもとに、これまでをおさらいしているので、学術の分野で、いやなんでそこに人間の心理とか加味しないの?専門家って……バカなの?とか、突っ込んでみたくもなったりしました。が、そうやって分析してああでもないって試行錯誤の結果、そもそもの当たり前にようやくたどり着くってことなのかなあ?とか思ってみたり。

 わたしの結論としては、いかに分析しようとも、所詮人間は生き物のうちのひとつで、知性によって、お金や名誉や支配に形を変えているけれど、要は「自分が快適に豊かに気ままに生きたい」という、いたってシンプルな要求によって、あんなことやこんなこともしてしまう本能を持っている、ってことになるのかしらと思ったりしました。

 本の構成として、ちょっと気になったのは、同じような記述の繰り返しが多く出てくること。数ページ戻れば、ああこのことだなと確認することが可能なのに、毎度説明されることが多いような。

 親切といえば親切なのかも。もし毎回の講義の内容を本書にまとめたというのなら、講義はたいてい週一回でしょうから、前の話忘れてるかもしれないし、おさらいという意味でありがたいです。

 が、こう、一気に読む場合とか、記憶力いい方なんかには、ちょっと邪魔っけかもしれません。その分の行数を、新たな情報なり詳しくつっこむなりにしてほしい。もっと知りたい!みたいな気分でした(笑)。

 

 戦争なんて、あってほしくなくて当たり前。なんだけど、それで儲けたり支配したいって人も世の中にいるってことを認識して、じゃあ、どうすれば避けられるのかを、世界情勢という大きな地図で見なくちゃいけなくなったのが、グローバルな今の世界。

 だから、広島長崎の原爆を、海外にかいつまんで語れるくらいには、知っておかなきゃならないんだろうなと。そして、上の世代の方たち?も、その体験を話すだけじゃなく、今どういった位置に日本がいるのかとか、平和の実現のために、具体的に必要な事はなんなのか、まで把握しようとしないと、夢物語で希望を話すだけになっちゃうんじゃないかな、なんてことを思いました。

 そして、なんでも上に従う(もしくは顔を立てる)をメインに処世術してきた世代が変わりつつあり、あんまりひどいとモンスターになってしまったりする若い世代は、よい面を見るなら、新たな関係性を見出す起爆剤として登場したのかも。

 同じ立場で対等に話し、無駄を排除してつまらない慣習とっぱらいませんかね?っていう人たちは、意外とこれからの厳しい世界を渡っていくのに合っているのかもしれません。そこにはちゃんと情もあってほしいですが。

 というわけで、興味があれば、秋の夜長にちょっと読んでみると、視野が広がるかも。そんな一冊でした。

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